バルテュス展@東京都美術館
「20世紀最後の巨匠」とピカソが讃えたパルテュス。その画業について、わたしはほとんど知らなかった。予備知識といえば、スイスの村に住み、年の離れた日本人の奥さんがいて、古くて大きな木造建築の屋敷に住んでいたということくらい。

それは唐突で、衝撃的な出会いだった。
乗換駅のホームでぼんやり電車を待っていたとき、展覧会の告知広告に目が吸い寄せられた。大画面の『夢見るテレーズ』。
モデルの少女テレーズは、普段着を着て長いすに腰を下ろしている。目を閉じて、頭上で手を組み、スカートがめくれ上がってパンツが見えているのに、気にするようすも恥じらうようすもなく、片膝を立てている。無防備とも挑発的ともとれるエロチックで危ういポーズ。
このポーズ、この表情、この構図、この色遣い・・・この画家の他の作品を見てみたいと思った。



バルテュスにとって、少女は「この上なく完璧な美の象徴」だったという。
彼の作品には、扇情的で危うげな少女が数多く登場する。ゆえにスキャンダラスな作家と評されたりもし、好みは分かれるところだろう。

彼はどの流派にも属さず、独学で独自の美の世界を築き上げた。
最初に製作した素描絵本『ミツ』は、一見、版画のようにも見える。モノクロの大胆な線と陰影。これを11歳のときに描いたというのだから、「巨匠」はすでに子どものころから約束されていたような気がする。
いろいろな見方があると思うけれど、バルテュス作品の魅力は、全体に漂う非現実的な浮遊感、記号のようにも見える図式化された表現、どこを見て何を考えているのかさっぱりわからない人物の表情にあるのではないかしら。

会場内には、スイス・ロシニエールにある彼のアトリエも再現されている。
制作の現場を想像しながら、バルテュス作品の完璧な構図と色調は、同じトーンの光線を強く意識して北側に大きな窓を設けるようなこだわりを持つ作家の美意識が生み出したのだと感じた。


センセーショナルな絵と「少女趣味」で名を知られた作家は、自由奔放に生きていたようにも見えるけれど、じっさいは死ぬまで独自の画風を追求し続けた孤高の職人だったのかもしれない。



絵を描くことは祈りのひとつ、神に行きつくひとつの道だと確信しています。
  ---- by Balthus

【2014/05/11 】 鑑賞するもの | comments(0) | page top↑
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