「あの頃」
あの頃、絵の学校に通っていた。
そこは自由でクリエイティブな空気に包まれていた。
夜間コースだったので生徒のほとんどはわたしより年上の社会人だった。田舎育ちのハタチの学生は、そこにいるだけで芸術家の卵の仲間入りをした気分になり、うれしかった。

カフェオレという飲みものを知ったのも、その学校で。
休憩時間になると、ラウンジでコーヒーとカフェオレを飲むことができた。そこで挽いた豆でコーヒーを淹れ、鍋で沸かしたミルクを注ぎ、白い陶器のカップで供された。コーヒーもカフェオレも100円。缶コーヒーを飲むような下品な行為をしてはいけない、というセツ先生の美学だった。

セツ・モードセミナーでは教えるということはしなかった。生徒が校長と一緒にデッサンや水彩を描く。長沢節の細い指から生まれる踊るような線や色づかい、筆運びを真似しながら、それぞれが絵のセンスを身につけていった。

setsu展セツで知り合った夫と、閉幕間近の長沢節展へ行ってきた。
長沢節の作品は鎖骨や手首、膝やくるぶしの美しさが際立ち、細いのに力がある。ああこの線、懐かしい! そうそう、「骨フェチ」のセツ先生が選ぶモデルは、みんなガリガリだった。
セツ先生はいつもササッと素早く描いているように見えたけど、制作中のビデオを見ると丁寧に鉛筆を走らせ、消しゴムも使っていたことがわかり意外だった。

わたしは真面目な生徒ではなかったが、セツに行ったことが今につながっている。少し絵が描けたので、就職先の小さな出版社ですぐにイラストの仕事をさせてもらった。セツ出身の夫と、なぜか家庭を持つことになった。

セツに行ったことは私の人生でもっともよい選択だったと思う。貧乏学生だったわたしがセツに行けたのは、奨学金がまとまっておりたからだった。親にも相談せず、たいして迷うこともなく、入学を決めた。

人生にはちょっとした行動や決断が将来を大きく左右することがあるんだなあ…と思う。それは将来から「あの頃」を見ないと気づかないことだけど。
【2017/06/19 】 鑑賞するもの | comments(0) | page top↑
変化の年。
ようやく梅雨らしい天気。
雨が好きなわけじゃないけど、晴ればかり続くと何だか疲れる。
たまにはどんよりした天気もいい。こころがのんびりする。

久しぶりに、消しゴムはんこを彫った。
Nothing will change unless you change .
今年は変化の年らしい(もう半分過ぎたけど)。


【2017/06/13 】 制作するもの | comments(0) | page top↑
| home |