死は予定されている @ キッチン・ストーリー
気がついたらレンタルDVDの返却日だったので、昨日は久しぶりに真夜中の映画鑑賞を楽しんだ(朝10時までに返却すれば延滞金がかからないから)。

いろいろあった1週間前、無性に映画を観たくなってレンタルショップへ。
アクションとかサスペンスとかラブロマンスって気分じゃなかった。マイナーでちょっと暗い感じ、でもほのぼのとするような・・・。
そんな「気分」に引っかかったのが、スウェーデン=ノルウェー映画 『キッチン・ストーリー』(ベント・ハーメル監督・2003年)だった。

ノルウェーの寒村にひとりで暮らす老人イザックの家に、スウェーデンから中年の調査員フォルケがやってくる。調査の目的は、ノルウェーの独身男性のキッチンでの行動パターン(動線)を毎日記録すること。
イザックは「馬」が欲しくて被験者に応募したのだけど、フォルケを露骨に嫌い、調査にも非協力的だった。

簡素なキッチンで、互いの「観察」がゆっくり進行する。そのうち彼らの心に変化が生まれ、言葉を交わすように…(調査員にとってはルール違反)。
友情がめばえ始めた2人の交流を軸に、フォルケに嫉妬するイザックの友人や、フォルケの堅物上司をからめながら、物語は進んでいく。

「観察」という関係にとどまる限り、相手との距離は縮まらないし、交流も生まれない。生きていくことの根底にあるものを、微妙な力関係が存在するノルウェーとスウェーデンの、孤独な独身男性(若くもなく、かっこいいわけでもない)をとおして描いてところが面白い。

いくつかの印象的なシーンとともに、イザックが2度つぶやいた「死は予定されている」というセリフが、忘れられない。


キッチンストーリー※キッチン・ストーリー
配役がいい。特に、つましくひっそり孤独な人生を送ってきたような独身老人のイザック役(写真手前)、恋人もできない冴えない会社員風の独身中年男のフォルケ役。ラストの飛躍(端折り方)がやや雑に思えたけど、秋の夜長におすすめ。
【2011/08/28 】 鑑賞するもの | comments(2) | page top↑
湯町窯のエッグベーカー
4月から自炊を始めた長男に、「何か送ってほしいものある?」とメールで聞いたら「卵を焼く茶色い器」と返信があった。
意外だった。だって、卵はあまり好きじゃないのに・・・。

息子が所望したのは、「湯町窯のエッグベーカー」。卵(素材)より調理の手軽さのほうが、一人暮らしの男子には重要なのだろう。

うちにその器がやってきたのは、十数年前。。。
第1号は、冊子の撮影用に送っていただいた。その便利さとかわいらしさが気に入って、松江に行くという友だちに頼んだり(結局、プレゼントされた)、日本橋の「島根館」で買い求めたりして、何年かかけて家族の人数分(4セット)を揃えていった。

エッグベーカー「湯町窯のエッグベーカー」が誕生したのは、戦後まもなくとのこと。このころ「用の美」を唱えて民芸運動を興した柳宗悦らの指導もあり、島根の民芸活動が大きく花開いた。
湯町窯を訪ねたバーナード・リーチに「イギリスにこういう形をした器があるが、作ってみないか?」と、提案されたのがきっかけだったという。

18~19世紀にかけて、イギリスではスリップウェアと呼ばれる陶器が作られていた。粗い粒子を漉して取り除いたクリーム状の化粧土(スリップ)で素地を装飾し、ガレナ釉(鉛の硫化物)をかけて低火度で焼いたスリップウェアは、大がらで、土の匂いがするような、庶民的な焼きもの。
湯町窯で使われていた飴色の釉薬がこのガレナ釉に似ていたことから、リーチが指導することになったようだ。

付け焼き刃のうんちくはさておき。。。
器の中に卵を割り入れ、蓋をして中~弱火で4~5分。火から下ろして受け皿に載せ、3分ほど蒸らす(待つ)と、美味しい目玉焼きのできあがり!
フライパン要らずで洗いものが減るし、温かみのあるデザインが一人暮らしの食卓にほんの少し潤いをもたらしてくれる(はず…)。

その後、息子がエッグベーカーを使っているかは不明だけど、一応「卵くらいケチらないでいいからね~」と伝えておいた。
【2011/08/25 】 暮らしのもの | comments(0) | page top↑
義父とアブラゼミ。
今年のお盆は、精霊もヒトも溶けてしまいそうな暑さだった。

semiji そして小望月の夜半、義父が旅立った。
なぜか、力の限りに鳴き続けて命尽きるアブラゼミの姿と重なった。

「84歳とは思えないほど、お骨がしっかりしていらっしゃいます。80代でこんなに量が多いかたもめずらしいですよ」と、収骨係の人にほめられた。
「60代の骨」なのだそう。それから、
「もうひとつ驚いたのは、歯がこんなに残っていることです」とも。

80歳を過ぎて挑んだスキーの回転競技で3位入賞。今年2月にもスキーを楽しんだ。お酒が好きで、「酵」という別名ももつ。健康のためと称してお酒とタバコを欠かさなかった。
じっさい、頭もからだも心も60代並みのしなやかさで、入れ歯もなかった。

霊界の研究をしていた義父の「ファン」という方々の話を聞くと、家族が知らなかった一面も見えてくる。
「あの世で必要とされたのでしょう」という説も、あながち間違ってはいないかも。。。

3週間前に入院したとき、好きなタバコを2カートンも持参していた。
入院後は、「現実」を12倍速で早送りしたような日々。
コブだらけの斜面を一気に駈け降りるように逝ってしまった、義父の最期もまた、あっぱれと讃えるべきなのだろう。

歌うことも好きだったおとうさんへ      虹の彼方に行ってしまった精霊たちへ
【2011/08/19 】 天界に住むもの | comments(0) | page top↑
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