未来が過去を変える
東急沿線の情報誌『SALUS」に寄稿している、理学博士・佐治晴夫氏のエッセイを楽しみに読んでいる。
Vol.13では、過去、現在、未来についての捉え方が新鮮で、膝を打った。以下ほぼ抜粋。

私たちは、とかく過去にとらわれがちです。「あの大学に行けなかったから出世できなかった」「あの人と結婚していたらもっと幸せになれたのに」、と。
満たされない今の境遇や気持ちを過去のせいにしがちですが、本当に過去が未来を決めるのでしょうか。
過去は文字通り、過ぎ去ったものであって、今、皆さんが過去だと思っていることは、頭のなかに残っている現在の記憶でしかありません。過去という実体は存在しないのです。つまり完璧に固定された過去はありえなくて、今、この時点で思っている過去は、自分の都合のいいように作り変えたり、脚色されたりした記憶という幻想に過ぎません。記憶は、日々、その時の状態によって塗り替えられ、変容していくことが脳科学の研究からも確かめられています。
あの時間はもう戻らないと懐かしんだり、もっとこうすればよかったと後悔してみたり、過去にこだわり続けているのは、あなたが、幻想として作りあげている物語なのであって、過去そのものと向き合っているわけではありません。
(・・・中略)
そして「今」という瞬間は、過去からの集積の結果としての「今」なのです。これからの未来をどう生きるかによって、その時々の「今」の集積として降り積もっていく過去は、未来によって新しく塗り替えられていくことになります。つまり、その時々で出会ったできごとの良し悪しの評価は、その時点ではできなくて、そのできごとの後にやってくる未来が、それまでたどってきた過去を決めるということ。過去が未来を決めるのではなく、未来が、それを生み出した過去の価値を決めていくということです。言い換えれば、「これから」が「これまで」を決めるということです。
過去も未来も、すべて「今」のなかに含まれているのですね。過去にこだわり続けることには、意味がありません。大切なことは、いい未来を夢見て、「これから」の第一歩を踏み出すことです。とても感覚的な表現ですが、過去は新しく、未来は懐かしいものなのかもしれませんね。



ここ最近、過去は可変するということを実感していたから、この記事はわたしにとってタイムリーな一致だった。「過去」は「今」の集積であり変容するもの。そして「未来」が「過去」を塗り替える。
こう考えると、過去に原因を求めず、未来にも過去にもつながる「いまここ」で生きるのがいいってことになる。
【2017/04/24 】 読んでみたもの | comments(0) | page top↑
「分人」という考え方と『決壊』という小説
平野啓一郎の小説『決壊』を読もうと思ったきっかけは、同氏の『私とは何か 「個人」から「分人」へ 』(講談社現代新書)が面白かったから。
個人を英語で表すとindividual=分けることができないが、分人はdividual=分けることができる、という考え。人間はたったひとつの「本当の自分」からなっているのではなく、接する相手によって変化する「分人」をいくつも有している、という概念だ。
「分人主義」を当てはめるなら、「あのときのわたしは自分じゃないみたいだった」と悩む必要はない。どれもが自分で、どれもが本当なのだから。「人間の個性はその人の中にある分人の構成要素で決まる」。だからより幸せな自分になるためには、「好きな分人」の構成比率を大きくするといい、と平野氏は説く。
なるほど、と思った。救われる人も多いだろう。自分の「分人」を上手く使い分けることができれば、人と接することが楽になるし、自分を肯定しやすくなるから。

決壊

前置きが長くなってしまったが、平野氏が「本当の自分」という考えを捨てるにいたった小説が『決壊』(新潮社)だという。「分人主義」が生まれるきっかけになったその小説を読んでみたいと思い、図書館で借りてきた。
背幅3センチほどの上下巻を手にしたとき、こんなに長い小説、読破できるだろうか、と一抹の不安が過ぎったけれど、ストーリー展開に引き込まれて一気に読み終えた。

ある殺人事件が軸になっている。穏やかで幸せな暮らしが殺人事件によって一変。事件をきっかけに、被害者と加害者、その家族の精神や関係性が歪み、「不幸」のスパイラルに巻き込まれるその過程で、それぞれの「分人」が顔を出す。
殺害された被害者の兄(東大卒のエリートで)は、家族や友人、恋人、刑事(容疑者として拘留された)とのやり取りのなかで、相手から「本当の自分」を突きつけられるが、状況に合わせて上手く「分人」を使い分けていた。が、ついに「分人」をコントロールできなくなり(多分)、「決壊」してしまう。なんともやりきれないストーリー。

犯行場面では、人間の「心の奥に眠っている悪魔」がえぐり出される。「悪魔」を引き出すのは「遺伝と環境」であり、社会もしくは人間からの「離脱」が凶悪犯罪の連鎖を生むという設定は、社会に蔓延する「勝・敗」「優・劣」「強・弱」といった分断思想に照らすと、現実味のある恐怖となって、認めたくないけど理解できる。

分厚い本を閉じたあと、どこに足を置いていいのかわからない不安定さが続き、そういう意味で心を揺さぶられた小説だった。


【2017/03/21 】 読んでみたもの | comments(0) | page top↑
memo 2001
大晦日にちょっとだけ片付けをしたとき、小さなメモ帳を発見。捨てようと思い、ページをめくっていたら、何かの本の引用とおぼしき文章を写していて、その行為も内容もすっかり忘れていたけれど、もう一度心に留めておこうと思い、こちらに書き写すことにしました。2001年のメモより。

感謝をささげることから1日をはじめなさい。
過去のあやまちをくよくよ考えて時間をむだにしてはいけません。過去からはただ学ぶべきことだけを学んで先へ進み、人生をエンジョイしなさい。

どんな場合でも何かを実現させる秘訣は、その実現を心から望み、それが実現しないはずはないと心から信じることです。
困難な仕事におよび腰で取り組んでも、成功は期待できません。しかし、その完成を見届けたいと心から願い、本気で取り組めば、必ず最高の成果が得られるのです。
人生における真の挑戦を、怖れることなく喜んで受け入れなさい。

あなたが完璧にできると思うことをやりなさい。
そして仕事の基準を最高のところに置きなさい。
いろいろなことに手を出して、どれも中途半端に終わるよりは、ひとつのことを完全に成し遂げる方がはるかに大事なのです。

あなたのすることが最高の水準に達しているかどうか、確かめなさい。
その動機が純粋であるかどうか、確かめなさい。あなたの行為に少しでも利己的な面や自己中心的な要素があってはいけません。

あなたが人に愛と思いやりを注げば、それは百倍になって返ってきます。それと同じように、人に批判と否定の矢を向ければ、百倍になって返されます。
不満や嫌悪や苦悩を隠しとおすことはできません。それは腫れものの膿のように、いずれは外へ噴き出し、切開が必要になるのです。
もっとも簡単で、もっともよい方法は、あなたの生き方を完全に変えることです。毒を含んだ否定的、批判的な考えを、愛と思いやりと調和にそっくり入れ替えるのです。

相手が一を望んだら、すすんで二を与えなさい。
愛情にあふれ、忍耐強く、寛容でありなさい。
ほかの人に求める生き方を、あなた自身の生き方にしなさい。
自分がそう期待されているからするのではなく、自分がそうしたいからするのでなくてはいけません。
どんなことをする場合も、つねにあなたの最高の面を出そうと、心から望みなさい。その願望が強ければ強いほど、願いが叶うことも容易になります。

つねにあなたの意識を高めておきなさい。
意識を高めれば高めるほど、真実がはっきりと見えてきます。
【2014/01/02 】 読んでみたもの | comments(0) | page top↑
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